【映画】『サブスタンス』考察②色や言葉から見える対比と共通点、監督の皮肉。

サブスタンス考察②黄色いコート、色などの対比 ★日常

※本ページはPR、ネタバレが含まれています

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考察①ITシステムと肉体の対比

1つ目の考察記事では、血と肉の塊が飛び交うようなボディーホラーの中に
なぜかIT用語が数多く登場することに気づき考察を書きました。

今回は、エリザベスとスーの対比、
お洋服の色や言葉から色々と考察していこうと思います。

時系列がバラバラなので、
読みづらいかもしれませんが、ご容赦ください🥺


サブスタンス(字幕/吹替)

※グロテスクな表現がある映画です

サブスタンス広告の違和感

長年続いていたフィットネス番組の降板、
プロデューサーからの無神経な言葉、
自分のポスターが無残に剥がされる事に気をとられ、車の横転事故。


なんて最悪な50歳の誕生日‥


そんな時、看護師がエリザベスのコートに忍ばせた
iT CHANGED My LiFE私の人生を変えた」と書かれたメモに包まれた怪しいUSB。

その中には『サブスタンス』という再生医療の広告動画が入っていました。

サブスタンス社の広告

とても短く、抽象的でわかりづらい広告にも関わらず
エリザベスは、数々の災難で思考が停止していたのか、サブスタンスを注文をします☹

もしや、サブリミナル効果では‥?と思ってしまいますが、
サブリミナル効果には、
人の無意識に働きかけ操作できるほどの強い効果は、科学的に実証されていません。


この広告で繰り返される、
「もう1人のあなた・・・、すべてはあなた・・・あなたは1つ・・・・・・なのだ」
という言葉には強い違和感を覚えます。


考察①で紹介した映画、永遠とわに美しくTIMEでは
自分自身・・・・が若返る・成長が止まるという設定で描かれます。

それに対しサブスタンスでは、エリザベスとは別の体を持ったスーが現れます。

エリザベスとスーは、同じ精神を共有しているため
『栄光』や『美』に対する価値観は同じです。

しかし2人は、7日間ごとに動けない状態になり、
お互いの記憶は、夢や既視感の様に現れるだけ。

確かに、エリザベスと同じDNAを持ったスーは、
エリザベスなのかもしれない。

けれど、自分の人生を7日間ごとに失っているのに、
相手を自分として考えなければならない部分には違和感があります。

もう一人の自分‥というよりは全く異なった存在。
年齢設定を考えると、「母」と「娘」のような関係に思えてきます。

エリザベスとスーの対比

「すべてはアナタ」・・・
しかし、印象的だったのは2人の数々の対比でした。

若さと美しさ、人間関係の対比

活性化剤を投与し、驚異的なスピードで細胞分裂を起こしたエリザベスの背中から、
エイリアンのごとく生み出されたスー。

とにかく明るくて、セクシーで可愛い👄

エリザベスの垂れたお胸とお尻に対し、スーのプリプリなバストとヒップ!
女性監督だから許されたであろう描写の数々!!

スーは一発でメイクががきまるのに、
エリザベスは何度塗り直しても気に入らない‥

そして、彼女たちを取り巻く人たちにも、対比が現れています。
特に面白く感じたのが、男性の対応の差でした。

スーの場合、世界が好意的で華やかに感じます。

オーディションの審査員、
スーにデレデレのプロデューサー。
道を歩けば、男性たちは振り返り、夜の相手は違う顔ぶれ。

向かいに住む男性もその一人。
エリザベスの部屋から聞こえる騒音に怒鳴り込んできた彼は、
ドアの前にスーをみた瞬間、
声色を変え、態度を一変させ、媚びるように振る舞います。

その後、超面倒くさいモンスター隣人になる😓

一方、エリザベスに向けられる視線は冷ややかなもの。
長年共に仕事をしてきたプロデューサー、ハーヴェイの酷い言葉。
スーと一緒にいた男性の高圧的な態度。

エリザベスに優しく接してくれた男性と言えば、
サブスタンスの存在を教えてくれた看護師と、
「君は今でも世界で一番綺麗な女の子だ」と言ってくれた、同級生フレッドくらい。

けれど、その優しさも、後になると素直には受け取れなくなります。
看護師は、優しさでサブスタンスを教えたのではなく、
被験者要因として扱っただけかもしれないし‥

フレッドも、優しい言葉をかけてくれる一方で、
泥水に浸かったメモを そのまま手渡すような無神経さを持っています。

管理人
管理人

悪意のない無神経な行動。
正直、これが一番怖かった(笑)

そう考えると、
エリザベスの周りに「素敵な男性」は、一人もいなかったのではないかと思ってしまいます‥


スーは男性を選ぶことができる。
エリザベスは、自分を選んでくれた同級生フレッドを選ぶしかない。
例えそれが、どこか残念な相手であったとしても(笑)

サブスタンス-フレッドのメモを抱きしめる

孤独の中、フレッドとのデートの約束を取り付け、
電話番号のメモを胸に抱きしめる姿は なんとも切ないシーンです‥😭


けれど、スーの周囲にいる男性たちも、
よく見れば、どこか期限付きの関係のように見えてきます。

若くて美しく、人気がある間。
「かわい子ちゃんはいつでも笑顔でなきゃな♪」と言われ、
いつも明るく元気にふるまうことがスーの役割。

欲望が満たされる間だけ、そばにいる人たち。

この映画に「まともな男性なんて一人もいないんじゃないか」と、感じてしまいます‥
ここは女性監督の男性に対する皮肉が入っているのでしょうか。

他の方のレビューもいくつか読んだのですが、
男性と女性での視点が違っていて面白かったです。

有り余る時間と孤独

エリザベスは、カレンダーに7日間交替の印をつけ、時間の管理をします。
しかし、仕事を失い友人の気配もない彼女には、長い長い7日間でした。


朝から晩までTVを観て時間をつぶしますが、
スーの栄養剤が2日分残っていると知り、大きなため息をつきます。

サブスタンス スー 分身の栄養剤



一方、スーは沢山の仲間たちに囲まれ、にぎやかな印象です。
仕事が瞬く間に増え、7日間では足りなくなってしまいエリザベスの時間を使い始めます。

時間を持て余すエリザベス。
時間を奪うスー。

一見、バランスが取れているように思えますが
7日間交替は絶対なのです!!!

このバランスを保ちなさいと、サブスタンス社にも強く言われます。

経歴の対比

エリザベスは、おそらく20代の頃から活躍し始め
約30年のキャリアがあります。

それは、スタジオの廊下に貼られた数々のポスターが物語っています。

サブスタンス-エリザベスの経歴を表す廊下のポスター

彼女の仕事については、
フィットネス番組と歯磨き粉のCMくらいしか表現されていませんが、
デビューしてから今までに、彼女は確実に経歴を重ねてきたのです。


一方、スーはエリザベスの後釜。
生まれて間もない彼女は、エリザベスの経験を受け継いでも経歴が少ないのです。

スーの経歴を表す廊下のポスター

出演したトーク番組では、
「話すほどの事は無い」と言いながら、
存在しない母親や”エリザベスの”幼少期の夢を語り、その場をしのぎます。

美の秘訣を聞かれたスーは、自分・・に正直でいる事」と答えますが
それを観ていたエリザベスは激怒。
それもそのはず、スーはエリザベスがいる事で成り立っているのです。


しかし、スーの発言も ある意味本当なのかもしれません。
自分の欲に正直に従って、エリザベスから若さと美貌を得ています。

「自分に正直でいる」というのは、「欲の赴くままに」と混同されがちですが、
意思で行動しているのか、衝動なのか
自分を大切にできているのか、甘やかしているだけなのか?

これを自覚していないと、生活や心のバランスが崩れてしまうのです。


そして、「すべてはエリザベスあなた」であるはずなのに
スーには自我が生まれているのです。

エリザベスの行動は、
娘を自分の分身のように扱う母親が、
避けられない「親離れ」に直面したときに起こすヒステリーのようにも見えてきます。

管理人
管理人

まあ、スーは分身なんだけどね。

嫌悪から見える共通点

エリザベスは、自分から若さと時間を奪うスーに、
スーは過食を繰り返すエリザベス
いい加減に/コントロールしろよ!己を!!!」と怒りをぶつけます。
※吹替え版ではエリザベスからスーの発言に切り替わる
※字幕版では表現が異なります


スー、それはないよ‥
エリザベスが自分をコントロール出来なくなったのは、
君が自分の欲のままに生きて、ルールを破ったことがきっかけじゃない…

でも、事の発端は「美と栄光」の欲から逃れられず、
スーを生み出したエリザベスなのかもしれない。

同じ精神を持っているからこそ、そこで衝突する。
自己嫌悪、同族嫌悪‥どちらともとれますが
やはり、母と遊び盛りの娘の様に思えて仕方がないです(笑)

管理人
管理人

身に覚えが‥(震)

ファッションと色の対比

スーの2度目の交替で、徐々に彼女の自我が生まれ始めます。

エリザベスのクローゼットに、自分のカラフルな洋服を掛けていくシーンでは
エリザベスのシックな洋服との対比が現れています。

50歳と25歳前後では、着る服や選ぶ色も変わってきますよね‥


この辺りから、スーのエリザベスに対する反抗心や
蔑むような態度が見て取れるようになります。

エリザベスの栄光の象徴であるポスターを片付けてしまったり、
彼女の持ち物にはOLD JUNKと書かれています。

サブスタンス エリザベスのガラクタ

普通、Elizabeth’sとかElizabeth’s Thingsと書くと思うんだけど😓

エリザベスの黄色いコートとラ・ラ・ランド

作中で、エリザベスの黄色いコートやカラフルな色使いが気になりました。
もしかして「ラ・ラ・ランド」のオマージュも入っているのでは?
と空想が膨らみます‥

サブスタンス 黄色いコートを着るエリザベス

ラ・ラ・ランド(字幕版)

ラ・ラ・ランドでは、
売れない女優が、芸能界での栄光を掴むまでが描かれます。

それに対しサブスタンスは、
掴んだ栄光を失い、どんな形でもしがみつこうとする物語という
夢の先にあるものを残酷に描いています。

黄色の持つ意味とは?

黄色というと、実験台にされた卵が冒頭に出てきます。

サブスタンス 冒頭の卵の実験


エリザベスのコートと、2度目の交替でスーが着ていたTシャツを見ると、
2人は実験台にされている卵のようにも思えてきました。


考察①の数字の伏線の様に、色を使った心理描写や伏線が潜んでいるのでは?
と考えてみます。

心理学者・精神科医のフロイトの精神分析で黄色は‥
・無意識の過敏性
・ヒステリーに関連する傾向
・承認欲求の現れ
などと言われているようですが、学術的根拠は強くないようです。


中世ヨーロッパでは、
イエス・キリストを裏切った使徒ユダが黄色い服を着ていたという背景から
「嫉妬」や「裏切り」を象徴する色とされてきたそうです。

そのようなネガティブなイメージから、
ナチス・ドイツ(1933年〜1945年)の時代において、
黄色は主にユダヤ人を差別し、
一般市民と識別するために強制された黄色い星イエローバッチを象徴する色としても知られています。

また、一部の国では、黄色を使ったネガティブな慣用句もあるようです。

Gelb vor Neid (ドイツ語): 
「嫉妬で黄色くなる」=嫉妬で血の気が引いている、猛烈にねたんでいる状態

rire jaune(フランス語):
「黄色い笑い」=本当は楽しくないのに、気まずさ・怒り・不満・皮肉を隠して無理に笑う状態

このような歴史から、
監督の出身地であるフランスでは、一番人気のない色‥とされていた時期もあったようです。

黄色いコートをエリザベスが着用した時は、「嫉妬」
スーが着用した時は、「裏切り」と取ることが出来ます。

しかし、色にはポジティブな意味もネガティブな意味もあることが多いです。
スーが着ていたTシャツは、健康的で活発な印象を与えます。

管理人
管理人

でも、スーは作り笑いが多かったなぁ‥
rire jaune 😬

黒い龍のガウンとシーツ

誕生したてのスーは、エリザベスの洋服を着用していました。
この頃は、倒れているエリザベスの体をいたわる行動も見られたのですが‥

自我が育ってきたスーの持ち物は、徐々に変化していきます。

エリザベスの白いガウンとは対照的な
背中に龍のデザインが施された黒いガウン!!

サブスタンス スーのガウン

言うまでもなく、悪い女の象徴じゃないか。(笑)
このガウンを、魔女の様になってしまったエリザベスが着用するシーンも印象的です。

シーツの色も、エリザベスの使っていたピンクから、黒に変わっていきます。

少しづつ欲に染まっていくような
人には見せない、内側の部分を表しているように思えます。

黒蛇のスーツと赤いドレス/月と太陽

スーがルールを破る日に着ていたボディスーツと
エリザベスがデートのために着た赤いミニドレスにも対比を感じます。

スーは、腕や脚を覆い露出の無いピタッとした蛇柄のデザイン。
エリザベスは、露出が多めのダボっとしたラインのデザイン。

サブスタンス ファスナーを上げるシーンの対比

2人のファスナーを上げるシーンでは、
無彩色と有彩色、シルバーとゴールドのファスナーの対比だけでなく
メイクから分かる肌のハリや、取り巻く人間関係の対比を見せつけているようにも感じます。


ちなみに、太陽🌞はゴールド、月🌛はシルバーで表現されることがあり、
陰と陽のように、太陽と月はバランスを象徴するものとして用いられることもあります。

これは、サブスタンス社に言われた「完璧なバランス」を彷彿とさせます。

太陽エリザベスがいないと、輝くことが出来ないスー
しかし、この映画では真逆の扱いを受けています。

また、フランス語では太陽は男性名詞、月は女性名詞です。
フランス人女性監督が、
月であるスーを輝かせたことに男性への抵抗があるのでは?と考えてしまいます。

そして、エリザベスとスーは、
本来は太陽と月の様に交替し、意識で出会うことはありません。
しかし、”スーを終わらせる時”に図らずも、彼女たちは出会ってしまうのです。

まるで、日蝕の様に重なり合うのです。
昔から日蝕は「不吉な前兆」「世界の終わり」と結びつけて恐れられてきました。

そして、その不吉な前兆は、
スー(月)がエリザベス(太陽)に対して行った事で確実なものとなってしまいました。


※ドイツでは太陽(女性)、月(男性)と表現されます。

印象的だったポスターのシーンの対比

老婆になったエリザベスは、
スーに片付けられてしまった自分のポスターを、ヨボヨボの体で引きずり出し眺めます。

年齢を理由に降板させられた自分。

何も知らず笑っている自分に苛立ったのか、
一度はスノードームを投げつけ傷つけてしまったけど‥

サブスタンス 割られたエリザベスのポスターを眺めるエリザべス


こんな姿になるなら、
この時の自分を大切にしていればよかったと思っているのかもしれません。

言葉から見えてきた監督の皮肉

「私の人生を変えた」

看護師がUSBと共に渡した
iT CHANGED My LiFE私の人生を変えた」という言葉が書かれたメモ。

物語が進むにつれ、この言葉は、
ポジティブなものからネガティブなものへと変化していきます。

言葉というものは、何とも無機質なもので
相手の表情や声色が分からないと、
受け取る側が都合よく解釈してしまうものだと改めて思いました。


また、「iT CHANGED My LiFE私の人生を変えた」 のItが、ITアイティーと読めてしまうので
ついつい考察①になぞらえ、「ITが私の人生を変えた」と解釈してしまいます。

監督はITについては触れていませんが、
映画界ではIT(配信・AI)の影響で変化が起きるたびに、デモやストライキが行われています。

監督は、フランス人女性。
知的で遠回しな皮肉が、ここにも表れているのではないかと勘繰ってしまいます🥐

SUE(スー)という名前の意味

スー(SUE)という名前は、
「(人や会社を)訴える」「訴訟を起こす」という意味の動詞と同じ綴りです。

エリザベスを長年起用するという約束を破った会社に対し
スーは無意識のうちに抗議していたら面白いな~と感じました。

映画の中で「SUE..SUE..SUE..」と連呼しているあたり
年齢を理由にはじかれる女性の声を、男性に突き付けているように思えてきます😑

あの映画のオマージュ「Take care‥」

エリザベスとスーは、フィットネス番組の最後に
視聴者に向けて、
「そうぞ自分を大切に♪」
(Take care of your self)

と投げキスをします。(下リンクの画像)

これは、考察①で紹介した永遠とわに美しくのオマージュでしょう。
永遠に美しくでは、若さを保つ薬を提供する71歳の美女リスルが、
「体を大切にしなさい(take care of it)」と言うシーンがあります。

女優×若さと美の薬、
そしてデミ・ムーアと元旦那ブルース・ウィリスの繋がりが見えました。


サブスタンス(字幕/吹替)

考察②まとめ

監督コラリー・ファルジャの年齢が、公開当時48歳と聞くと
「50歳の誕生日を迎えた女優」はコラリー自身を投影している作品なのだと感じます。

いつの年代でも自分は常に不完全な状態で、必ずどこかに問題があると感じていました。
と、年齢ごとに変わっていく美に対する意識をインタビューで語っています。

コラリー・ファルジャ監督の独白──若さと美への執着が招く狂気を描いた『サブスタンス』を生み出すまで
デミ・ムーアの体当たりの演技と、想像を軽々と超えてくる予測不能のストーリーが絶賛された『サブスタンス』。この異色作を手がけたコラリー・ファルジャ監督が、自身のクリエイション魂を動かす原動力を明かす。

この映画を観て思い出したのは、
20代の頃に働いていた会社の女性上司たち。

50代~60代の、おばさんと呼ぶには失礼なくらい
強く賢く優しく美しくカッコいいマダムたち。
そんな彼女たちも、監督のように悩むことがあるのかもしれない。

でも、私は彼女たちみたいに素敵なマダムになりたい。

🌼 🌼 🌼

考察②では、前回のIT考察よりも気軽に書こうと思ったのですが、
思った以上に長くなってしまいました‥😓

そして、第三形態モンストロ・エリザスーについても思うところがあるので
まさかの考察③まであります。

過去にも映画レビューはいくつか書いていますが、
苦手なグロ映画について これほど思う事があるとは‥
私も年齢を気にするアラフォーだもの。

今回はこれまで。

本日もご覧くださり、ありがとうございました!

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